中高年、あるいはリーダーに求められるもの

リーダーシップ

 45歳。研究開発を中心に担当してきたエンジニア。
エンジニアだが、新製品の開発、市場に送り出すにあたっては、営業担当とともに、見込み客の開拓に奔走した経験を持つ。
一見、繊細な学生のような印象。比較的小柄でやせ形の物静かな男性だ。

かれが携わってきた技術分野はかなりニッチな分野で、応用範囲はそれほど広くはない。
光学分野、半導体、塗装・プラスチックのメーカーといったところが、応募先に考えられた。

そこで、3社ほど、面接がはいった。
そのうちの二社は業界大手で、条件的に申し分がない。
三社とも一次面接は順当に通り、二次面接に進んだのだが、そこでお見送りになった。

その理由として共通していたのは、リーダーとして物足りないというものだった。
もちろん、その言葉は各社異なる。
『真面目なんですね』
『線が細いのかな』
届いたのは、こうした表現のフィードバックだ。

確かに、外見と印象はその通りであるが、書類選考で通過しているように、それだけの人ではない。
職務経歴書には、関連部署や上司の反対を振り切って、みずからのチームで開発した新製品の営業に駆け回り、結果的に数十億円の売り上げを達

成したこともある。
それだけの反骨、意志の強さ、粘り強い行動をとることができる面がある。

しかし、面接ではその元気良さを伝えることができなかったようだ。

面接ではどうしても緊張する。
それといくつかの不合格を経験すると、どうしてもおもねりが出て来てしまう。
面接官が受け入れやすいような答えを作り出す、というといいすぎだが、言わない方がいいだろうというようなことを削除し、相手が評価するだ

ろうと思えるようなことだけを返答する。
これが大きな間違いだ。

その場で、こういう答えのほうが喜びそうだ、などと考えた内容など、浅はか外の何物でもなく、先刻面接官はお見通しといっていいだろう。
なぜなら、こちらは初めて二次面接のステージに乗ったがちがちの緊張した役者でも、相手は数十人以上の面接をこなしてきた古つわものである

。万人受けするような返答は、飽き飽きして、鼻の先で笑い飛ばス楊なものに違いない、と考えるべきだ。

この場合、面接官は何を求めているか、といった視点ではなく、この企業のこの職場は、何を求めているのか?と考えるべきなのである。

欠員の穴を埋める、あるいは不足しているパワーを埋めるスキルを必要としているのは間違いないにしても決してそれだけではない。
ライバル企業や市場の厳しい競争や要求にさらされている部門であるならば、それはプラスアルファを当然期待しているといっていい。

それは、現在のスタッフにはないスキルだったり、考え方や行動だったり、正確だたりする。
さらに言えば、経営や上司の視点を超えた発想と、それを自分なりに追求し、市場に問いただしてみる、といった、いわば反骨の精神、野武士の

ような貪欲さである可能性も高い。

市場を見れば、常に経営の判断や上司の判断が正しい、などとは断言できはずがない。
となると、間違えるかもしれないジャッジへのリスクヘッジは、社員一人一人の仮説や信念しかない。

経営は常に効率を求める。無駄を省き、いかに早くゴールに到達し、成果を上げるか。
そのために限られたパワーをいかに効率よく配分し、推進力をあげるかのジャッジをせざるをえない。

ただ、市場競争は何が起こるかわからないし、しかも勝負は連続しておこる。
許されるなら、すべてのリスクヘッジを取っておきたいところである。
しかし大局的にはそれは不可能である。
コンプライアンス厳守の今日にあって、無理ヘンにゲンコツといったことは、許されないからだ。

では何をもってリスクを担保するか、といえば、それは一人一人の信念と行動だからだ。

3M、やグーグルの15%ルールではないが、すべての成功の図をはじめから設計することはできない。
一人一人のポテンシャルを発揮させること、そのノビシロが、意外な成功につながる。
これはポストイットをはじめとする、数々の、意外な成功の例をあげるまでもないだろう。

となると現場のリーダーは、そうした考え方とチームのマネジメントを描き遂行する信念が要求されるだろう。

翻って、自分の若いころのことを思い出してほしい。
若いのにナマイキなやつだ!
とか
何もわっていないくせに、一人前のことを言うな!
などと言われたことはないだろうか?

その時に、まったく年寄りは古臭いとか、冒険をしないとか思ったことがあるのではないだろうか?
そして、自分が正しいと思ったら、それを証明しようと、いろいろな人に意見を聞いたり、試してみたり、より調べてみたりといったことをした

はずだ。
そのほとんどは、先輩や上司がいったとおりで、自分の浅はかさに気づくだけの結果だったかもしれない。
しかしその分、ひとより早く、体験をし、知識を増やしたといえるのではないか?

経験を積み、仕事になれてくると、多くのことは経験済みになる。
だから、なにかトラブルが起きても、簡単に処理できたり、素早く解決できたりする。

しかしここに落とし穴があるようにおもえる。

それは、今までより、いい解決方法か。より高い成果をあげえたか?が本当は問われるべきではないか?
そう考えると、経験を積んでも、簡単に処理するのではなく、若いころと同じように、失敗をおそれずに考えチャレンジしてみることこそが重要

なのではないか?

中年ビジネスマンが陥りやすいのは、経験値をブラッシュアップしようとしないことであり、
それをするには、経験をふまえさらに考え、より良い結果を生み出すことと考えることが不可欠だ。

面接対策もその点を考えてみたいものだ。