『偽装』のプラスとマイナス

目的遂行のために、
あるいは生存のために偽装し敵の目を欺く。

自然界でもカメレオンなどの爬虫類や昆虫のように
特別な攻撃力や武器を持たない生物では
自然にこのような機能が備わっているようだ。

これは生存のために自然に適応してきたものといえる。

実際、木の葉や枯葉のような色形をした昆虫を見たことがあるが
一般の人間の目から見ると、気味の悪さがある。
特に植物だと思ったら虫だったというのは、
想像するだけで鳥肌が立つ

しかし昆虫にとっては、生存に関わるカモフラージュであり、
これなくしては命の存続に関わる。
ダーウィンガラパゴス諸島で発見した『特異』な生物の姿は
『生命力』の姿といってもいいかもしれない。


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今日の朝日新聞朝刊では
大手自動車メーカーが、1100人にも上る人員を偽装出向として契約。
働かせていたとして労働局から指導を受けているという記事が報じられている。


これは前にも書いたが、
過酷な企業競争の中から生まれた一種の知恵だが、
いわば法律違反の悪知恵ともいえるものだろう。
もっとも派遣への切り替えを予定していたという企業の説明が正しければ、
タイミングのずれなのかもしれない。
もっとも、自然界でタイミングがずれれば
文字通り命取りになるのだから、
これが企業や業界の命取りはオーバーにしても、
自分の首をしめることにならなければと思う。

ただ、先日のビジネス誌の記事にあったように
このようなことが蔓延していることも想像できなくもない。
企業(受け入れ側と人材会社ともに)ぐるみ、業界ぐるみにまでなると
もしかしたら、日本産業界の競争力低下の可能性も出てきたら、
法の見直しにもつながりかねない。と、悲観的に考えれば
どんどんマイナス方向に拡大していく。

一方で、これらの犠牲になっているのは、
労働者であり、さらに言えば日本人のみならず、外国人労働者
かなりの数になると思われる。
となると、少子高齢化社会に突入した日本における
今後の貴重な労働力である外国人労働者における日本マーケットの評価は失墜し、
将来に不安が拡大していく。
もちろんこれもマイナスになるだろう。

一工場、一企業、一業界における生き残りのための『偽装』が、
大きなマイナスになる可能性をはらんでいる。

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個人における偽装の例は、
職歴詐称だろう。
これは、訴訟や懲戒の対象になりうる。
男と女の関係であれば、絶交・絶縁が待っている。
もちろん訴訟になる可能性だって大いにある。


だんだん、カモフラージュの単位が企業、個人と小さくなるたびに
その責任は重くなり
昆虫などの弱者になるにつれ『生命』をかけた行為になるのは
不思議であり、残酷のようにも思える。

翻って、
命がけでない限り、偽装とはプラスよりは
はるかに分の悪い賭けといえるかもしれない。