『自分時間』のスピード

今朝の日経新聞には日立製作所の記事が掲載されている。
日立製作所ソニーと並んで、いま厳しい状況にある企業として
注目の的になっている。


詳しくは記事を参照して欲しいが、、
総合事業をめざすために、市場の動きに経営のスピードが追いつかないというのが
目下の日立製作所が抱える課題らしい。

ここに『日立時間』という言葉が使われている。
『・・時間』という呼び方は、『スピードの単位』と『その時間のすごし方』を指す場合がある。
この場合はスピードだ。

ずいぶん前に『ゾウの時間、ネズミの時間』という本があったが、
生物によって、時間の長さとスピードが異なることを説明していたように思う。


人間にとっての時間は、地球の自転にかかる時間を単位に決められていると思うが、
それは個別の生物にとっての時間とは関係を持つ。
しかし、異なる生物の間では、当然だが地球自転時間の単位は異なる意味を持つ。

身近なところでは『犬』は人間の7倍の速さで成長することが知られている。
IT業界のスピードの速さを表現するのに『ドッグイヤー』と呼ぶのは、
うまい表現であるとともに、不思議な比較ともいえないだろうか?


犬の成長とIT業界の成長が似ているのは、あくまで人間時間を軸にしている。


では、ひとつの例として『日立時間』というような場合は何と比較しているのかというと、
ひとつは現代の一般企業のスピードと比較しているし
同業界の企業のスピードと比較しているわけだ。

まったく同じ事業を営んでいる企業はないし、
それ以上に個々の企業の生い立ちも体質も、もちろん思想も異なる。
厳密に言うと異なる生物間の比較だから、意味がないともいえるし、
いやいや企業という組織であり同じ業界に属している以上
そのスピードを比較するのは重要な意味があるともいえる。

経営戦略は競争相手や、市場の変化、そして将来の見通しがあって、
成立する。それは自社の強みの分析や将来の見通しの推測だけではなく
それらを何を基準にして判断するかによって
その差異が出てくる。


企業のDNAという言葉は、そのことをさしているのだろうと思う。


一人一人の人間でも
スピードの違いは大きい。
のんびりや、せっかちという性格もあるし、
物事を進める順番も異なる。
何をしなければ次のことが出来ないといこともあれば、
一度にいくつものことをすることが出来ない(あるいはやりたくない)ので、
ひとつずつ片付けて次に進むひともいれば、
一度にいくつものことを平行して
やり方を変え調整しながら進めていく人もいる。

それも個性や価値観、もちろんDNAが関係するのだろうから
どちらがいいとかいう必要はない。

しかし一方で社会生活を送っていく上では
競争もあるし、タイミングも重要な要素になる。
チャンスをものにする確率が平等だとしたら、そのチャンスの量は多いほうがいい。

となるとスピードは速いほうがチャンスに遭遇する絶対数を増やすことが出来るだろうから
何かといい結果を生み出しやすいと考えられる。


しかしそこで考えたいのはチャンスの質と量の関係、である。


慎重に考えれば、よりよいチャンスに出会えるだろうか?

もちろんそうは限らない。
何も考えずに判断を下すのは論外にしても
ある程度考えたら、判断はしなければならない。
新しい検討材料が増えなければ
考えは堂々巡りになる可能性のほうが高い。
この場合の検討材料には、情報だけでなく、
時間も追加しておこう。
一晩(位の時間)考えを寝かせるのは無駄ではないだろう。
もちろんこの時間の長さは問題の重要性にもよる。


そう、費やしてよい適正な時間の長さはテーマによるのだ。