「感謝」は最高のインセンティブ

「働くこと」に熱くなれなくなっていると感じているあなたへ

昨日、3ヶ月前に再就職に成功した50歳代前半の男性から
数度、携帯に電話が入った。
昼休みに二度、3時頃に2度入っている。

あいにく面談や外出で、着信に気が付かず、
いちど返信したときには、おでにならず、結局、返信できたのは夕方になった。


再就職して3ヶ月という期間は、
新しい会社になじめなず、継続を断念するタイミングにしては長い。
通常、失敗の場合は1ヶ月から2ヵ月半くらいで判断される場合が多い。
しかしこの方は、相当な苦労、努力をされてきた方で、
我慢強い上に50歳を越えてから再就職の難しさを十分に理解できるほど、
集中的な活動を経験して再就職に成功した。
だから、決定したときに感激は相当なものだった。

数度の着信記録を見たときには、
「もしや」という気持と「まさか」という気持が、
ドシンと胸に響いた。

その一方で、「もし3ヶ月、新しい職場で続けられたら、電話で近況をご報告します。時間があったら酒でも飲みましょう」という言葉も思い浮かんだ。
再就職が決まった時にはこうした思いを率直に言葉にする人も多く、
お礼のお菓子などを頂くこともある。
しかし、入社した以降は、忙しさや新しい職場に慣れたりお付き合いが増えるだけに、
連絡を頂くことはほとんどない。
そういう意味でカウンセリング、コンサルティング
トランジション、つまり転機における期限付きのサポートであることがほとんどといえる。

夕方、何回かのコールで電話に出たその男性の口調は重く、
「いやー、大手企業に慣れていたせいか、仕事が厳しくて、
残業が70時間以上。体重も7キロも減りましたよ」という話から始まった。
残業が70時間というのはさすがに多い。
しかし、残業はそれほど多い職場ではないと聞いていた。
手当だって、企業はそれほど出さないし、そういう状態を放置しないだろう。

お話を聞いてくと、こういうことだった。
大手企業でさまざま提案活動をしたり、業務改善に取り組んできただけに、
新しい職場には課題が山のようにあると目に映った。
それを忙しい仕事の合間を縫って、また仕事が終わってから取り組むと、
どうしても夜が遅くなる。
「こんなに忙しい中で、よくそこまでやれるね」
以前からそこで働いている同僚からはそういわれたらしい。

そうした、働き振りをその企業の社長は見逃さなかった。

この会社では、毎朝朝礼をしている。
その日の注意事項や、仕事の推移について、毎日共有しているのだ。
朝礼には社員のスピーチの時間が盛り込まれている。
ある日、この方に指名があった。
あまりこうしたことは得意な方ではないが、
感じたことをお話したらしい。

あまりに職場を歩き回ることが多いので、万歩計をつけて図ってみたら
毎日1万歩以上歩いているとわかったこと。
職場にはいくつかの改善できるようなことに気が付き、
少しずつ改善を始めていること。
慣れていないために残業が多く、体はボロボロだが、
取り組むこととがあるために、気持は生き生きしていること。
そして50歳を過ぎてこうした職場と仕事を与えられたことに感謝していること。

この方の職務経歴書を一緒に確認し、さらに詳しく聞き、加筆していくと
思わず、目頭が熱くなることがあった。
苦労が多いが、暗いわけではなく、何年も続けている趣味を持ち、それもプロ級のスキルを身につけていること。
家族は明るく、3人のお子さんもみな大学を出て、一番下のお子さんは大学院進学も考えていること。
奥様はこの方の再就職活動に際しては、一緒にハローワークにいき、情報を検索したり、
毎週日曜に新聞に挟み込まれる求人チラシや求人情報誌から山のように切抜きをしたりと
一家の協力がすばらしいものだったこと。

こうした体験をされた方だけに、
おそらくその話は、かなり説得力があるものだと創造できる。

この話は、社長さんも感激されたようで、
「本当にいい話を聞かせてもらいました」とねぎらいの言葉を頂いたそうだ。

そして、しばらくしてこの方は社長から呼ばれた。
「実はあなたを採用したときには、それほど高い期待をしていなかった。
残業も全てが付くわけではないので、いま働いている人たちと同じように
夕方5時になったらささっと退社するというように思っていました。
しかし、見ていると、夜遅くまで業務以外で、どうすれば働きややすくなるのかを考え
行動してくれている。これは給与額を決めた前提とは違うので、少し見直させてもらいました」という
内容だった。

そしてその月の給与明細をみると、
基本給が数万円も上がっていた。

「50歳を過ぎて、仕事を与えてもらって、こういう評価をしてもらえる。ありがたいものです」
電話の内容はこうしたものだった。
そしてわれわれのサービスに対しても、お礼を何度も頂いた。

給与が上がったのは、それを目的にしたわけではなく、
新しい仕事を得られた以上、自分で気が付いたことはどんどんやって、
何とかそれに報いよう、もっといい仕事をしようという、
実にシンプルで基本的な気持だったと思う。

このお話を聞いて、「感謝」という言葉がそこら中に張り巡らされていることを感じた。
会社に、仕事に、社長に、職場に、チャンスに、経験に・・・・。

「最近ね、明日はこの職場がどう変っているか、
楽しみになってきたよ」
最近話しかけられた同僚のこうした言葉が、
この方の大きな励みと手ごたえになっている



本当のインセンティブは何ですか?
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