こだわりの強さは、どこまで他を捨て去れるかにかかってくる。

気の合うカウンセラーの同僚と週末に酒を飲んだ。
目的は、生牡蠣だ。
ノロウィルスが社会を騒がせているが、
この店は大丈夫だという確信がある。
さらにいえば、旬のうまいものは味わっておかないと損をした気分になる。

生牡蠣、マグロの脳天の刺身、あおりいかの刺身、と
舌鼓を打った。

そこでの話しだ。
そのうちの一人が、『いままでに何人の人の再就職を手伝ったのかを数えてみたい』という。
『われわれの仕事は、何人のクライアントの再出発を支援できたかということが、モチベーションにつながる』からだ。
残念ながら、組織に所属していると、数カ月程度の評価期間での目標達成という『数字』しか、共有できていないし、自覚も出来ていない。
『社内評価で上位にいました』というだけでなく『200人の支援をしてきました』という客観事実こそが、社会の中での自分を証明できる。
再就職支援の現場にいれば当然のこととしてわかる。

一方で『いろいろな人の再就職支援を手伝っていると、いろいろな人と出会う。なかには常識的に信じられないような考え方の人とも出会う。もちろんそんな人にもきちんと対応しようと努力するのだが、実際、相当こたえる』。
われわれも、一ビジネスマンであることは変わりない。
1件のストレスは、それだけにとどまらず、周辺に波及する。
それが毎週のように続くとなると、かなりストレスがたまるのは
ビジネスマンである以上当然だ。
いままさにそうした心境にあるらしい。

われわれの仕事は、再就職を希望する人の支援である。
決断は本人がしなければならないので、
その決断をするための、もろもろのお手伝いということになる。
この具体的な内容は、クライアントのスキルや経験、考え方によって
さまざまだ。

簡単に言えば、応募書類である職務経歴書作成だって、こちらで数度のヒアリングをし
書き上げることがある。
逆に、ほぼ完璧に自分だけで書き上げてこちらの関与が不要な場合だって時々ある。
面接のトレーニングも同じようなものだ。

これらのことは第三者の目に触れさせたり、意見を聞くことで
その内容や価値が明確になっていくことが多い。
ずっと同じ会社で働いてきた人にとって
自分がやって来たことや出来ることが、社会で通用するのかどうか、
自分だけでは判断しにくいからだ。
その反対に、たいしたことはないと思っていても、
それが常識に照らしあわせれば、かなりすごいことをやってきたと評価されることもある。

たとえば、消費者金融の債権回収業務。
この仕事は全国の顧客に電話で、貸し金の回収業務を行っている。
その電話本数は、一日あたり何本だと思いますか?

ヒントは『かなりの本数』だ。

答えは約200本でした。

それも一方的に話すより、顧客のを聞いている時間の方が長いという電話だ。
貸し金の回収というと電話によるダイレクトな督促という印象がするが、
実際は逆なのだ。
通話時間は長く、
しかも無理押しするのではなく、
『改めてお客様からお金をいただく』という気持ちでやらなければ
うまくいくものではないという。
これは20歳代の方から教えていただいたことだ。
この経験は、若い年齢の方であれば高い評価を受けることが出来る。

このような発見とおなじように、
わらわれが支援をしていて、逆に教えられたり、
感動させられたりすることもさらに多い。
それこそ、カウンセラーという一人に人間の経験や価値観を
いかにニュートラルにしていようと
やはり一人一人の経験や考え方には
大きな温度差がある。
誤解を恐れずに言えば、
それは『凡庸』と『卓抜』と表現もできる。
この差は、担当するわれわれの努力の、能力の差でもあるのはもちろんだが、
本人の仕事や、生き方や、趣味などへの姿勢に大きく根ざしていると思う。

最近それは、その人の生き方への『こだわりの強さ』だと思うようになってきた。
周りに迷惑がかからないように力をつける。
家族がきちんとした生活を送れるように、収入を確保する。
自分が計画した生活を実現するために、家族の了解をもらい、自由に働く。
いろいろな形がある。

こうした決断をする人は、トレードオフをいとわない。
何かを得ようとすれば、何かを犠牲にしなければならない。
いや犠牲というのは適当ではない。
むしろ、潔く切り捨てるというのがふさわしいかもしれない。

酒の付き合いを止める、減らす。
ゴルフを止める。
好きで好きでしょうがないこと。
これをやめると、人間関係にも支障が出るかもしれないということ。
切り捨てるには、相当な覚悟がいる。
しかし何かを徹底的に実現するためには、
それはやむをえないのだ。

そう考えると、人間は何でもやろうとすればできるが、
すべてを完全にはできない。
だからそこそこ、人並みのことに手を染めつづけるか、
あるいは本当にやりたいことに絞りきって、すべてをそれに注ぎ込むか
この選択しかないということだ。

この他の何かを捨て去っても悔やまないなにか。
実はそれを発見したり決めつけることが難しい。
しかしやる人はやっているのだ。

その差が、自分の達成感や充実感に出てくる。
それはきわめて自然に、周囲にも伝わってくるのだと思う。


自分の『こだわり』を確認してみませんか?
答えは自分の中にあるのは間違いないとすれば、それを決められない自分に気づかなければならないかも。
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