コンプライアンスの現場。そのギャップ。

最近、賞味期限の偽証や偽造などが頻繁に公表され、日本の食の危険性が叫ばれている。
これなどは、報道をよく読んでみると、ほとんどが経営陣が関与していたり、黙認しているようだ。

それは製造ラインで複数の人間が関与していて、
『現場の人間が勝手にやりました。経営はまったく知らなかった』という弁明よりは
はるかに納得がいく解釈のように思えてならない。

実際、それは経営陣の強権によって、実質的な命令、強制というのが多いのではないだろうか?


ある大手流通企業を退職した方が、ローカルチェーンを展開しているスーパーの求人に応募。
事前観察のために、店舗を見学した。
そこで、コンプライアンスの意識の差、実行の差を強く感じたいという。

たとえば、冷蔵品である牛乳の特売では、冷蔵ケースの外の通路に、
プラスチックのコンテナに入れて何ケースも重ねている。
朝早い時間で、冷蔵庫から取り出したばかりならまだしも、
これが1時間、2時間と経過していくと、表面が乾き、中の空気が膨張してパック自体が膨らんでくる。
そうなると衛生面、品質面の低下は間違いなく起こっている。

その方が在籍していた大手スーパーでは、このようなことは絶対に許されないことだ。
お客さまに安全で品質の高いものを提供するのが、流通業の使命であり、
このような行為はコンプラアインス遵守以前の問題ともいえるのではないか、
というのがこの方の意見だった。
それは同じスーパー業界で働くものとしての驚きであり、
怒りに近いものだった。

その方が、面接に臨んだ際に、この件を面接官に質問した。
面接官は店長と役員である。
こんな答えが返ってきた。
『保健所が来るたびに、その件は指摘している。
 でもそんなことを聞いていたら、商売にならない。
 だからそのままやっている。』

たしかに、小さな店舗では、まずそんなスペースがない。
特売日にはスピードが余裕され、転倒での品切れは許されない。
また売れ行きもそれだけ早いから、何時間もそのまま放置されている商品などはほとんどないだろう。
ある面、理想論は通用しないことは、同じ現場に身を置くものとしてわからないことではない。

しかし、この方は、その場でこの会社への就職は放棄した。
経営者がこのような考え方を、当然と思っている企業では、
下のものは、どうしたら改善できるかという提案をすることができないだろう。
もしかりに提言したところで、それまでの実績を盾に、
異分子としてはじき出されるに決まっている。

『改善点を考えたり、推進したりするのが自分のやりがいでありキャリアだから、
それを拒否するような企業では何も考えず、発言せず、黙々と働かざるを得ないだろう。

それは自分のしごとではない。』

これを聞いたときに、やはり経営者の意識、組織の意識や
事業が目指すものが狂ってしまっていると、
そこで働くものは、ただ黙ってそれに従うか、
そこを去るしかない。
結果、その企業は、いつか事件、事故を起こす可能性が高い。

それは保健所の視察に代表されるように、
官では防止することはできない。

この構図は、まさにいまマスコミで騒がれている事件と、まったく同じ構図であることがわかる。
それだけに、怖い。


組織の中で、憤りを感じたことはありませんか?
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