キャリアカウンセリングの価値とカウンセラーの価値。

久々に、いつもの日比谷の日東紅茶でスパゲティ&ワイン。
もっとも最近はドリアとスパゲッティがセットになったメニューが中心だが、
昨晩は二人でワインボトルを一本開けた。


最近の情報交換が中心になったが、
キャリアカウンセリングの価値はあるのか、あるいはどのくらいあるのか?という話になった。
あまり細かなことは考えたこともないが、
キャリアカウンセリングと、OP会社でのカウンセリング業務では、似て非なるものがある。
キャリアカウンセリングはクライエントへの支援作業をすべて含むが、
後者は、転進、すなわち再就職をいかに早期に決定するかが基本的なミッションになるからだ。
もちろん、そのプロセスにおけるクライエントの気づきや発見などによる満足度、納得度というのが一方の重要な要素なのだが、現実的にそれは個人的な事情に左右されるので、指標化するのが難しい。したがって、業務としては評価の対象にはならない。
逆に早く=属人的な条件や市場環境を無視した絶対的な期間を標準化して、早期化を推進しようとするから、そのプロセスで要求されるサービスは、むしろ邪魔になることすらある。

もっともキャリアカウンセリングという概念そのものも、概念であるゆえに、現実に職業あるいはビジネスとしては存在しにくい。

では、クライエントの要望、客観的な市場環境から、個々のクライエントにどのようなサービスをどの程度まで提供し、どの程度の成果?を上げるのかは、最低条件として考えておいた方がいいかもしれないと思った。


提供できるサービスは知識&ノウハウとカウンセラーの体験?

こうした話をしていて、数日前に隣のカウンセラーと話したことを思い出した。
同じように、キャリアカウンセラーが提供できるサービスのことだったが、
ともすると、われわれが日常提供しているものは、カウンセリングの学習で得た知識やノウハウに偏っていないだろうか?ということだ。
カウンセラーがクライエントに接するスタンスは同じでなければならないが、提供できるものは、異なって当然だ。
その異なる部分とはキャリアカウンセラーの体験や価値観に根ざしたものではないだろうか?
もちろん、それはクライエントに押し付ける類のものではない。むしろ考えを進めるための参考に示唆する部分の話だ。厳密に言うと、それはカウンセリングというよりは、キャリアアドバイザーとしての役割部分になるかも知れない。いずれにしても再就職や進路決定には、第三者としての意見や考え方を提示する必要場面がある。その際には、抽象的な内容を言っていたら禅問答のようになってしまう。

となると、カウンセラーがまず持ち出すのは、個人の体験や事例がもっとも説得力のあるものになる。この部分が、カウンセラーの研修や勉強会ではまったく触れられない。あるいは無視されているというのが現状だ。
しかし実際には信頼関係を構築するためにも、的確なアドバイスをするためにも必要になる。
問題は、そういう場面のための準備は十分できているかどうかということだ。
何でもかんでも話せばいいのではないが、引き出しは多いほうがいい。あらかじめ洗練されているとなおよいが、さらにいいのは、的確なアドバイスが出てくる素地を耕しておくことだ。


 カウンセラーの学習は、ともするとアカデミックなものになりやすい。
この分野の知識は必要不可欠であることは間違いない。ただ、これを深く掘り下げていくことに偏ると、現実離れというか、理屈やデータになってしまう。“〜というものだよ”“このように考えるべきだ”というように。
そうでなければ、カウンセラーの情報共有は『私はこうやって、早期に大量のクライエントの再就職決定を実現した』というノウハウ、やり方の誇示になりかねない。

 なぜなら、おかしなことだがその早期決定は、どのようなプロフィールを持ったクライエントに対して、どう考え、どのような介入をし、どのようなところに就職を決定したかという、本来個人的なサービスであるにもかかわらず、その“個”がほとんど話題になることがないのだ。
そこで大切になっているのは“時間&スピードと量”。すなわち“効率”なのだ。
そこにはさまざまな条件やキャラクターを持った、個々のクライエントは存在しない。10人、20人といった“量”や“塊り”があるだけだ。

 カウンセラーの学習範囲が、クライエントが備えている知識やキャリア、スキル、さらには価値観だったり、彼らなりの希望というものだったりしたら、それをサポートするカウンセラーにも同じようなバックグランドが必要に思える。もちろん、すべてを理解することはできないが、共感の前提として、無知であることは許されないのではないかと思う。


 たとえば、最近、『中堅崩壊』(野田稔)という書籍を手にしたが、これはバブル就職期の世代の特異性をデータを交えながら検証したものだ。これなどは、日ごろ大まかには同じような指摘をしているものの、それだけではクライエントには届かないことを痛感している。
まだ前書きを読んだ段階に過ぎないが、彼ら=中堅(ミドル)は、データ的にみると社内教育研修費が減少した時期に管理職段階に差し掛かっている。
 しかしその後の不況期突入により、後輩となる新入社員の採用が途絶え、組織的には部下を持たない管理職、専門職にならざるを得ない世代でもある。そして、同じ部門で専門性を磨くことになるのだが、それは大局的に物事を見たり判断したりする経営スキルの欠如につながっている、というような指摘がある。そしてある調査ではこの世代に求めにくい項目として『新規事業の提案、企画』という結果も出ている。要は、マネジメントに不可欠な現状改革力が望めないというのである。

これはあくまでも一般論で、この世代すべての人に当てはまるものではもちろんないから、扱いには慎重であるべきだが、こうした調査や論考を、カウンセラーが知っていれば、サポートのクオティはさらに確実なものになるのではないか?

必要なのは、カウンセラー自身の、幅広く、前向きな、さらに言えば新しいものへの好奇心と学習とも言うことができるかもしれない。

立派な人格者にはなれそうもないが、そうしたエネルギーと努力を持ったカウンセラーではありたいと思っている。いずれにしても、人の支援である以上、怠け者でいてはいけないようだ。


あなたにはどんなアドバイスやサポートが必要ですか?
http://www.goodcareer.jp