クラウドソーシング

早川書房からで新たに新書シリーズが刊行されている。
シリーズ名はJUICE。

その第一回発行分は2冊だが、そのうちの一冊が『クラウドソーシング』。
このシリーズは翻訳が中心で、1400円前後と通常の新書より高い。
しかしその分?、版型も大きく、内容も十分読みごたえがあるようだ。

クラウドソーシングという言葉は、腰巻にあるように、
聞いたことはあるが、実はもっともよく知られていないビジネス用語だそうだ。

自分も最初にこの本のタイトルを見たときには、
クラウドコンピューティングと別称と思ったくらいで、
あいまいな理解をしていることが多いことに気づかされた。

クラウドソーシングは、
いうなればウィキノミクスと同じようなもので、P to P、オープンテクノロジーに通じるようなものと理解してもいいと思う。

ネットの普及によって、従来のビジネスモデルが崩れ、変身を遂げている。
ビジネスモデルが変わるということは、人々の働き方も変わるということだ。
よきにつけあしきにつけだが、個人の自由度ははるかに向上する。
あくまでも何かをしたいという欲求や行動力を備え、ネット環境が必要になることが前提ではあるが。

しかし逆に考えると、ネット環境もそなえ、何か新しいこと、面白いことをやりたい人が、
何も行動を起こさない、あるいは起こせない状態でいるとしたら、
今すぐになにかをし始めるべきだ。
あたりまえのことだが、モンモンとしているだけでは
欲求不満になるのが落ちだ。

個人の欲求はマズローではないがいくつかの段階があり、
多様性を備えている。いい悪いではなく、自分で納得できるものを
できる範囲で試みる。共感する仲間を募る。

こうしたことが必要であり、有効だということがわかる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

多くの英知を活用するためには、いくつかの前提があるが、
限られた優れた人よりも多様性をもった多くの普通の人のほうがすぐれた結果を出すのだとしたら、
企業の経営の仕組みは、かなりきわどいことになっているのではないか。

・経営幹部が物事を決定する。これは仕組み上、そうあるべきで、うまくやることが大事だ。
 
・しかし、幹部は現場をあまり知らないことが多い。
 それはしょうがないにしても現場をしろうとしない。
 あるいは現場を知るよりは、自分たちがこうあるべきだと考える形に持って行こうとすることが多い。
 言い換えると現実ではなく、自分たちの持っているイメージに近づけるということだ。

・そしてそれは当然失敗する。あるいは中途半端に終わり、期待するほどの効果に結びつかない。
 そもそも経営幹部と現場では、期待ン内容や度合いが、食い違っている場合が多い。
 現場ほど、しなくてはならない作業が増えるとから、それに見合った成果を求めるようになる。
 多くの場合、それは裏切られる。
 経営は決めるだけだから、それはそもそも現場のやり方が悪い、
 あるいはやり方が徹底していないのが原因と考える。
 
・たとえば、にぎにぎしくスタートするプロジェクトも目標や締め切りがあいまい。
 だから総括の時期もあいまい。そして脈絡もなく新たなプロジェクトがうまれる。
 
 その間、現場は振り回される。現場が動かなくては、何も試しようがないから、動くのは現場だ。
 しかし幹部は現場を知らないから、どのようにすればいいのかが分からない。
 そうやって現場は動かされる。幹部は、イメージを数字と理想を掛け合わせて、パワーポイントで
 まとめる。

 作業は当然増える。しかも整理がされていないから試行錯誤をしながらだから余計に増える。
 イメージだから検証のしようがないのだ。
 やった結果がすべて『正しい』のであって、あるべき結果を想定していないから、
 そもそも結果と目標のギャップが存在しない。

 こうした状況は多くの企業であるようだ。
 在籍している人間は、そうは言わないが、退職した人間にはそうした状況がよく見える。

 これは傾向にすぎないのだが、
 企業の中で昇進した人のほうが、昇進競争に後れを取った人より、
 再就職に苦労することが多いという事実がある。
 
 それは現場を離れて、マネジメントにシフトしてしまうからだ。
 転職の場合、採用する企業は、即戦力を求める。
 即戦力とは、マシンのオペレーションができる、
 営業なら顧客をもちすぐに成果を上げることができるということだ。
 
 マネジメントはほとんどの場合、即成果に結びつかない。
 中長期的な話になる。もちろんその重要性は間違いない。
 しかし、先ほどの即戦力という基準から言えば、顧客を持っていない、技術知識が古い、ということでもある。

 なぜこのようなことを書くかというと、
 そうした役割分担,すなわちヒエラルキーによって動いているのが企業という組織であり、
 この階層間に、綿密な情報共有がなければ、効果的な施策は生まれないし、
 実現できないということにつながるからだ。

 多様性というのはなにも同じ階層の中でのことを指すのではなく、
 組織の中での役割や価値観のタテの間にも言えることではないのだろうか?
 それぞれが役割を分担し、その立場で意見をもつ。
 それをきちんと交換し、コンセンサスを取っていくのがあるべき姿だと思う。

 多様性がより正しい結果を生むというのであれば、
 これはやはりフラットな組織になり、そこで、頻繁に無礼講にちかい運営がなされていることなのかもしれない。