あるクライアントの一年間の活動の軌跡。

50歳、コンピュータエンジニア。
英語力、交渉力、コーディネート力あり、人柄は温厚。
ただし、キャリアは特殊で、それが活かせる場所は、かなり少ない。

このようなプロフィールのクライアントを約一年担当し、
昨日、無事終了した。
終わってみるとあっという間だが、先の見えない試行錯誤の連続でもあった。

キャリアを活かせるステージは、かなり限られる。
おそらく就職先は外資系が中心の、比較的大手(海外において)になるだろうというのが、
私とクライアントの共通の意見だった。
これに基づいて、まずこうした条件の企業の求人情報を検索した。
しかしこれはあるにはあったが、あまりにも少なく、さほど活動の対象にはならなかった。

その後、試みたのは
いま現在は求人ニーズは顕在してはいないものの、
組織力からしてこうしたポジションを設けるポテンシャルがある企業のリストアップをした。
これは15社のリストができた。
これをコールセンターに依頼し、クライアントの売込みを行った。
売込みにはシナリオもあり、なかなか効率的な方法である。
結果、3件の面接が入った。予想に反して地方に本社を置く企業の
東京セクションの面接だった。

残念ながら、結果は思わしくなかった。
クライアントいわく、『面接に臨んでみると、企業側のリクエストは、固定されたポジションがあり、それ以上のものでもなかった』


クライアントの希望は、5年、10年のタームで、
将来につながるような仕事ができることであって、
現在の枠にはまった仕事ではなかった。

ここで、大きな壁に当たった。
意外に年齢制限が強く、面接のアポが取れないのだ。
それでも同じ方法を三度ほど繰り返したが、効果はあがらなかった。
このあたりが大きな壁で、なかなか次の手が浮かばなかった。

悩んだ挙句、今までわれわれのクライアントの就職実績があった企業の求人を
もう一度見直し
希望とする基準である『5年・10年で取り組める仕事&ポジション獲得の可能性がある企業』だ。

その過程で、求人を開拓している営業から2社提案があった。
とにかく面接が入りそうな企業がある、というのだ。
話を聴いてくれるなら、チャレンジはできる。
募集職種は研究職。
通常なら選択はしない。

しかし、実はその企業に就職が決定したのだ。

その企業は、歴史はあるが大きな成長をしていない。
専門領域が中心のため、知名度もない。
しかし潜在的な魅力がいくつかあった。
社長が柔軟な考えの持ち主であり、彼の描く将来に向けての事業計画と組織の一角に
クライアントのキャリアがぴったりはまったのだ。
事業計画は数年後の株式公開であり、新規事業の拡充である。
すでにニート対策と絡ませて、ソフト関係の学校も設立しているなど、
ユニークな視点も持ち、実行力もある。
ここならストックオプションの可能性だってある。

2回、計10時間近い面接で、即、合格が出た。


『あまりにも意外な結果でしたね』
『本当に。いつもなら気がつかない求人だったのに、
応募を勧められたこと、面接が入りやすい企業ということ、
求人票の中の、長期のプロジェクトを任せたいという言葉・・・、細かな要素の集まりが
偶然を生んだみたいですね』
こんな会話をしたほどだ。

企業や求人情報は、意外に『現在』という二次元で見て判断していることが多い。
しかし当然のことだが、企業は社会環境と同じように変化している。
その要素は経営のビジョンやそれを具体化した事業計画であり、それを支える技術力・商品力と財務だ。
残念ながら、求人票やホームページではそれはわからない。

制約されたスペース、求人票を作成する技術力の不足、広範な対象に向けてのメディアの性格などから、限界がある。
これを補うのが、求人開拓担当の勘や、クライアントの好奇心、行動力だ。

実際、この会員は子供のような好奇心と行動力を持っていた。
『7月1日付の入社になっちゃったんですよ。10日を希望していたんですけど、すぐにでも来てくれというので、しょうがなくて』
『何か、用事でもあったんですか』
『だって、今日からワールドカップでしょう。決勝までゆっくり見たいじゃないですか』
と笑っていた。

私の一年間の支援が終了した今日、
ワールドカップ初戦、ドイツ・コスタリカ戦のホイッスルが鳴った。
4対2でドイツが勝利した。
06年ワールドカップが開幕し、また新しい『それぞれの歴史』が始まった。


⇒キャリア支援に関しては
 http://www.goodcareer.jp