『キャリア支援』のリスク管理

ジョークのようなタイトルだが、
まさしくそうだ。

再就職の支援という仕事をしていると、
その人のライフスタイル、価値観、生活プラン、家族構成をはじめ、
その人のスキルや仕事のスタイルなど、
いろいろなことが関連してくる。

中高年の方が対象だと、
現役である時間があまり残されていない。
65歳あたりまで、体と相談しながらというのが
まずひとつの目安だ。

もちろん、55歳くらいで『昔は55歳が定年だったんだ。もう十分に働いたよ』と
早期退職イコール早期定年を選択する人もいる。

しかし、まっとうに考えれば
残された時間が潤沢ではないから、
今までのキャリアをうまく生かしたい、という気持ちが強くなる。
丁寧に、慎重に、次の新しい仕事、会社を選択する必要がある。


しかし、実際にはあまりゆっくりしてしまうとマイナスが働いてくる。
数日でも、仕事をしないと、電話番号やパソコンのパスワードをうっかり間違えるような
経験が増えるような年齢だから、
一ヶ月とかの単位で仕事をしていないと、忘れ去ることが多くなる。
もっといえばテンポが鈍ってくる。


また、こんなことを行ってはいけないが、
再就職の支援サービスだってビジネスだから、
あんまりゆっくりしてもらっても企業にとっては困りものなのが実情だ。
ここでも企業の業績をすばやくあげることが要求されている。
したがって、こうした仕事に携わっている人間には
少なからずジレンマを感じることがある。

個人の考え方生き方を尊重して、
ゆったりと、あるいは幅広くいろいろなことを考えて
まさしく、今までの社会生活で考えても見なかった自分のキャリアプラン
深く考えてみたいという方のサポートと、
再就職をすばやく決定するための目標を持っている
ビジネスマンの意欲との葛藤だ。

しかし、少なからずこうした仕事に携わっている人は
産業カウンセラー、GCDF、CDAなどの厚生労働省認定のカリキュラムを学習し
試験にパスしている。
それ以前に、第二のステージの仕事として、いろいろな職業の中から、
こうした仕事を選択している人たちだ。
カウンセラーの前職は、総務や人事の出身者が多いようだが、
思ったほどではなく、営業やエンジニアだった人も多い。
キャリアの重要性を感じ、それを考え、整理しようとする人への支援を
選んだだけに、『クライエント』(支援対象者をこう呼ぶ)第一に考えることは
当然である。

決してそれは揺るがない、
そういいたいところだが、実はそれが揺らいでしまう瞬間がある。
ビジネスマンの目標達成意識や競争意識は
残り火のように(というと、また語弊があるのだが)まだ、燃えているかのようだ。


しかし一瞬の風が其の火を燃え上がらせようと、
それを制する意識は強く備えている。

最近こうした誇りを揺るがす出来事があったことをあるサイトの投稿で読んだ。
結構、経験豊富なベテランのカウンセラーが、
不十分な求人情報をもとに、
応募、受験を強要したとクライエントに感じさせたという事件だ。

こうした事件は、まったく起きていないわけではない。
何らかの力、自制が働いて、ぎりぎりのところでフォローされ、暴発することは多くはないのだ。
しかし、今回は、窓口へのクレーム電話が延々と40分ほど続く事態になったという。

カウンセラーとクライエント相互の信頼感、感謝、納得、理解・・といったセイフティ機能が
働かなかったのだ。


実はこの背景にはあるものは
いろいろ想像することができる。


カウンセラーの評価が再就職決定のスピードと量を中心に行われている人事制度、
それを純粋に信じ込んでいる企業文化。
個人で全部を進行するカウンセラー業務へのチェック機能の弱さ。
相互チェックの働かない職種別会議。
それらの前兆を感じながら、先んじて手を打つことのできないマネジメントの鈍さ。


さらに頑として自分のやり方が正しいと盲信しているカウンセラーの傲慢。
実績が自分に与えるプレッシャーによって、自己の良心にほころび生んだのかもしれない。


こうした危険が生じる可能性について
企業も、再就職支援、キャリア支援に携わるひとも、真剣に考えておく必要がある。

特に、仕事への慣れ、経験の慢心に危険性が潜んでいる。

常日頃、こうしたサービスに携わっているスタッフが、何を話題にしているか。
それを感知するのは、逆説的だが
企業のビジョンや理念の、足腰の強さだと思う。

またこうした事業を営む企業ほど、ビジョナリー・カンパニーである必要があるのだろうと思う。


⇒リスクのないキャリア・サポート
http://www.goodcareer.jp