未来からの逆算 あるいは現在から離れて眺めること

抽象的な物言いになるが、
『いま』を考えるときに、足元から精査していろいろな出来事や現象を眺めすかして理解する方法がある。


現状認識をもっとしっかりしろよ、という場合にはこうした意味を持っていることが多い。


一方で、『いま』の中に立っていると、
見える範囲はしっかり見えるが、見えない部分は、おそらく永久に見えない。
また見える形もかわらない。


だから、そこ=『いま』から離れてみるということは、結構意味がある。


長年勤めた会社を離職すると、
結構これが見えてくる場合が多い。


特定のマーケットのなかで、熟知しているコンペチターを相手に丁丁発止のやり取りを行う。
時には新規参入があるにしても、それほどある話ではなかったりして、
仕事の考え方、やり方には大きく影響することはない。
市場という池に、知らず知らずにどっぷり浸っているわけだ。


しかし、いったん会社を辞め、その池を離れてみると、
当事者でなくなった分、いろいろなものが見えてくる。
池の大きさ、水の透明度、まわりの景色の中の位置付けから、
そこに浸かっているそれぞれの企業の強み弱み、企業間の隙間などなど。
よく見えれば見えるほど、ビジネスチャンスも発見できるし、逆に失望することもある。


この発見は不思議だが、
多くの離職者から実際に聞く言葉だ。


もちろん、この『離れて、見る』ということ自体がかなり難しい。
実際にそこから離れてしまうことは、それから無関係になることだから
そこからまた戻ること自体が難しい。
会社を辞めてすぐ復職するというのは、
ほとんど不可能に近い。


だから、あまり活用することができない。
逆にいえばこうした習慣や特技を身につけると、強力な武器になる。


ソニーの前CEOだった出井さんは、社長になる前に
未来のエレクトロニクス、ネットワーク、エンターテイメントなどが
どのようなものであるかを考え、
その中でソニーはどのようなポジションにあるべきで、
何をどうするか、
そのためにいまできることは何かを、
考え、それをたびたびレポートにまとめ
当時のトップに提出していたという。


もちろん考えるということは、
イメージだけではない。
メーカーだけにどのような技術、デバイス、製品といった
カタチにまで落とし込んで整理する。

レポートのきっかけはさまざまだが、
当時の米副大統領ゴアのスーパーハイウェイ構想も
インターネット時代、デジタル時代におけるソニーの存在への危機感を
感じさせるものだったらしい。


ソニーといえば、かつての最新技術、エンターテイメント性が色薄れ
ブランド力が失墜したかのような印象が強い。
ウォークマンがi-podに取って代わられ
テレビ、DVDレコーダーはパナソニック、シャープに遅れをとった感がある。
その詳細はわからないが、
出井さんが社長に上がり、その後の事業展開は、これらのレポートが核にあり、
その指摘、ビジョンの的確さには実に驚かされる。


こうした、『いま』から離れるのには、平面的に離れること、
そして将来という時間軸で離れるということもできる。
もっと小幅であれば、
異なる業界の視点とかも考えられるかもしれない。



いずれにしても、同じところで見ていたら進歩はない。
改善はあっても革新はない。


もちろん平均の上はあっても、突出することはない。
予期せぬ変化が立ち込めている現代、
『いま』から離れるということを意識しておきたい。



キャリアを<目標>から逆算してみる。
反対にスタート地点からおさらいしてみると見えてくるものがある。
http://www.goodcareer.jp