分析から行動、成果までの長いステップ

今朝、浅草のスターバックス
立石泰則『ソニーインサイドストーリー』を読み終えた。

ソニー前会長の出井さんの社長就任から会長退任までを追ったルポだが、
当初の印象以上に迫力があり、読み応え十分だった。

大賀社長の負の遺産ソニー存続の危機を乗り越えた前半と
自分の考えるソニーづくりに挑戦した後半で構成されているが、
この本で一貫しているのは、挑戦という試行錯誤の繰り返しと、
破壊と創造の難しさだ。


あらゆる情報を分析し、考え、あるべき姿を具体的に纏め上げていく作業と、
実際にその責任者として、10万人以上の組織、
しかもインターナショナルな組織の舵取りをしていくのは、
もちろん大きく異なる。
政治の世界でも同じようなことが話題になっているが、
スピード、それぞれの収益、技術、人間性、才能といった多くの面で、
企業の方がより具体的でシビアな印象を受ける。


出井さんや、その後のソニーの評価はここでは出来ないが、
考えさせられたことは多い。
徹底的な情報収集と
それが自らの将来にどのように影響してくるか。
将来、自社はどのようにあるべきか?
そのためにいま何をしなければならないか?

これらの点を徹底的に考え、具体的な計画に置き換えていくことがなければ
企業の足取りは重くふらつくことは明らかだ。
そしてもうひとつ。
やはり経験に学ぶということの大切さだ。
もちろんいうは易い。

前任者の方針の否定、新しい機軸の打ち出し。
ある面で非情とも見える決定。
限られた時間、資源で
最大の効果を挙げるには、
トップの判断が的確で迅速でなければならない。
そしてトップは、他の取締役と同じ視点で
考え、行動しているだけでは、
その役割を達成することは出来ない。
そういう意味でまさに孤独であり、孤高でなければならないし、
そうならざるを得ないことを得心した。

振り返って、トップで以外の人間(こういう人がほとんどだが)は、
どうあるべきなのだろう。


この本の中でも紹介されているが
たとえばSCE(ソニーコンピュータエンタテイメント)の久夛良木さんは
上司を上司とも思わぬ強烈な個性で
当初どの部署からも引き受けてはなかったらしい。


しかし、その才能と実績に注目した経営幹部の引き立てで
昇進し、さらに多くの実績を上げ副社長にまで上り詰めている。
久夛良木の前には奴隷か敵しかいない』とまでいわれる個性も
実績を上げているからこそ、
そのポジションもあるのだろうが、
一緒にしごとをしたい仲間としては、クエスチョンの声が多いようだ。
これは日産のカルロス・ゴーンさんとは
ちょっと違うようだ。


こうした役員と真っ向に話し合い、説得するという作業は
考えただけでも大変そうだが、
それを支えるのは
トップの理想だったりあるべき姿の強固なイメージだったり
何者にも揺るがない確信に違いない。

その基本はやはり情報収集や勉強、そしてとことん考え、
自分なりの答えを確立することのなのだろう。
そこに個性もにじむし、アイデアも盛り込まれる。

基本的な活動は実は奥が深く、重いのだということを
改めて確認した。

しかし、奮闘した出井さんも
最後に会長・CEOというポジションに着いたことが
大賀前社長と同じ轍を踏んでしまったことは
残念な気がする。



事業計画と同じように、キャリアにも計画がある
http://www.goodcareer.jp