カウンセラーのモチベーションとは

●キャリアカウンセラーという仕事と職種

キャリアカウンセラーという仕事は、
転機に直面し、迷い、悩んでいる人が自分の考えを整理し、自分なりの決断に至るための
支援をするものだ。

だからといって、人生を知り尽したような経験をしたわけでも知識
があるわけでもない。
もちろん人格がひといちばん優れているわけでもない。

むしろ、一般的に抱かれているイメージが信頼するに値するものと思われていいるとしたら、
実際の仕事の場面を見るとがっかりする部分が多いかもしれない。

この仕事はそうした役割を担う職業でもあるけれども、
その活躍の場はフリーであるよりも企業に属していることのほうが多い。
職業として見た時には、フリーでは活動の範囲が広すぎ、しかも収益が上げにくく、やはり求人情報を開拓するスタッフと協力し合ったほうが効率がいいようだ。業界の中にはカウンセラーが求人情報を開拓する役割をあわせてもっている企業もあるが、ふつうに考えると担当する会員数と関係するようだ。

組織に属するにせよ、フリーにせよ。
またカウンセリング専門にせよ、求人情報を開拓する役割を担うにせよ、これは仕事である以上、成果を上げる必要がある。この場合の成果とは会員の再就職決定数になる。

カウンセリングが果たすべき役割、そしてそれに会員が期待するサービスと、
成果をあげなくてはいけないというカウンセラーのビジネスマンとしての使命とがぶつかり合うことはないだろうか?
正直なところそれがまったくないとはいえない。
成果を上げるために、組織としては目標達成者にはインセンティブを支給したり表彰したりするのは自然だ。
心情的にはカウンセラー間のライバル意識も芽生えるだろう。
そして個人によってはこのカウンセリングの役割や行為についても、考え方はバラバラなのが現状だ。


もちろんカウンセラーは営業とは異なるから、
きちんとした倫理基準を設けている会社が多い。
個人情報の保護とか、個人の意思の尊重とか、コンプライアンスとか、
ほかの職種と大きく異なるほど厳しいとはいえないにせよ、企業はそれを重要視している。
一方でそうした基準・指針はあまりにも正しくそれゆえに抽象的なレベルで語られていることが多く、
解釈が多様になるのも事実だ。
解釈に多様性が許されるということは、
基準がないというのとそれほど変わらない。

カウンセラーにより使用するツールも言葉も事例も異なる。
性格も経験も異なるのでこれは避けがたい。

だから問題が起きないように、直接会員サポート担当につながるサポート・ホットラインを設けたり、
会員からアンケートをとるといった制度も多く設けられている。

会員の意見や感想を収集する仕組みとしては完全とはいえないまでも、十分と思える。

さて本題に戻る。

カウンセラー自身のモチベーションはどんなところにあるのか?
実際にアンケート調査などをした例はないが、おおよそ以下のようなものになるだろう。
・個々の会員がこのサービスを受けて、自分の理解を深め、納得のいく再就職が決定できた場合。
・実際に再就職をして働いた結果、思っていた以上に今までの経験が生かせ、評価されたという便りが届いた時。
・ほかのカウンセラーに比べ、より効率的に担当会員の再就職が決まった。
・社内で会員の再就職決定数を表彰された。
・あらかじめ設定された目標達成率でトップをとった。
・難しい条件の会員の再就職を成功させた。(ハイレベル、条件の厳しさなどを含む)
・会員と真正面から対峙し、気持ちを共有し、信頼関係を築き、納得に行く結論が出て、そのとおり再就職が決まった。などなどである。

そのほかには、
・自分が実施した施策、提案が、ほかのカウンセラーの役にたち、成果に結びついた。
・工夫して作成したツール、資料が、カウンセリングの的確でスムーズな実行に貢献し、マニュアルに組み込まれた。
ということもあるだろう。

大きく分類すると
個人の目標に対する活動成果に対するもの。
カウンセリングそのものの精度アップにつながったもの。
組織のオペレーションの効率化に貢献できたもの。
活動結果に対し、会員から感謝の気持ちが届いたとき。
のように分類できるだろう。

これらは一つだけでなくいくつも重なる場合がある。
いい仕事はさまざまな面で学ぶべきことを含んでいるからだ。


●『同僚の目標となる成果』とは、どんな条件を満たしているか?しかし、

現実的にはどんなに多くの人の再就職を決定し、組織の定めた決定人数目標を達成しても、
周囲がそれやその人の行動を見習えないもの、見習おうとしないものもある。
これは、カウンセラーの個性が強すぎて、自分なりのやり方基準を、確固として持っているからだとも言えるが、
逆に担当するクライアントやそれを取り巻く環境ががあまりにも多様で、簡単にノウハウとして通用しないこともある。
事実、再就職を希望する方々の再就職決定期間というものは、大きく異なる。
20歳台であれば1,2か月。30歳代でも3か月から4カ月もあれば、大体は再就職が決まる。
しかし40歳代も後半になると、半年くらいはかかることが多い。
50歳代でも同じようなもので、後半になると一年近くかかる人もでてくる。
もちろん、年齢で見るのは皮相的な分類で、本当は本人のキャリアや意欲が最も重要な要素だ。

これは個々のクライアントを担当するカウンセラーにしかわからない。
だからせっかくのカウンセリング、アドバイスが共有しにくいのだ。

本来ならこれらのノウハウ、ナレッジこそ、組織としては蓄積し、活用し、全体のレベル向上に役立てたいものなのだが、それがかなり困難なのだ。

組織としての脆弱さ、マネジメントの複雑さ、ビジネスキャリアの豊富なそして高齢のカウンセラーは、自分の知識やキャリアに自信を持っているだけに、頑固ともいえる。
それに対するマネジャーは年齢も若く、経験も少ない。
こうした特殊性の中では、本来組織が持つ方針の決定や実行を細かく設定して進めていくことは難しい。

うがった見方をすれば、若手のマネジャーは高齢のカウンセラーの言っていることを、よく聞いているという姿勢をとるというテクニックだけが発達して、実際は出来る範囲で取捨選択して、結局、そのキャパシティと能力の限界が小さいために、そのほとんどを捨て去り無視していることさえいえなくもない。
厳しい言い方だが、現状としては確かにあって不思議はない。

こうした中で、多くのカウンセラーが納得し、素直に見習うことができるナレッジとはどのような要素を備えているだろうか?
そのひとつは、やはり共有する情報の多さ、深さがあるかどうかだ。
カウンセリングはある面でさまざまなストーリーの中を暗中模索しながら、可能性を信じられる方向を発見したり開拓していくプロセスともいえる。
それには、その時どのように思ったか、何を迷ったか、クライアントの性格はどうか、どのように変化してきたかという、不規則な襞が共有できなければ、それを聞くカウンセラーは咀嚼できないのだ。
だから、個人的に親しいカウンセラーがお互いの性格や考え方の理解を深めながら、そのケーススタディを共有し、反する意見や、指摘を聞きながら、自分なりに取り込んでいく過程が必要になる。
これがナレッジの共有に共通の方法なのかもしれず、今後研究していく必要があるだろう。
単にマネジャーが聞きまわるのでもなく、ひとりの担当を決めて個々のカウンセラーの話を聞いてくというのにも限界があるだろう。本来それこそがマネジャーの仕事なのだが、別に担当を決めるといことで、その場から離反した瞬間それは失敗する。そうした場面をいくつも見かけたことがある。

そう考えると、もっとも効果的なのは、一人ひとりの“個”を活かしながら、意見や体験を吐き出し、意見を戦わせることが出来る小集団活動だろう。
それを経営が信頼できるか、そして尊重できるかが、課題だ。
もっともそうした個の力を包容できる企業でなければ、こうした仕事の数字以外の見えないところを事業にする資格はないのだが。