推定値に対する実績数値のギャップの意味。

今朝の朝刊。

●マイナス3.1%
10月の鉱工業生産指数は、前月比でマイナス3.1%だったという。
それも10-12月でみるとマイナス8%位に落ち込む予想が立っている。
事前のエコノミストの予想でもマイナス2.6%だったのが、それを0.5%上回るマイナス幅だ。
しかも在庫が2カ月連続で増加しているのでこのままいくと景気回復はさらに長期化の恐れがある。

●マイナス0.04%
有効求人倍率は9か月連続マイナスで、0.8(前月比)。これは4年5か月ぶりの低水準。完全失業率は3.7%と少し持ち直したらしいが、これは就職活動を諦めた人が増加し、計算に入っていないことを考えるとこれも悪化している可能性のほうが高い。
大学生の就職内定取り消しの件数が増加し、これも史上最低レベルという。特に昨日のニュースなどでは不動産業界が多いとのこと。これは簡単に想像がつく。

●マイナス3.8%
消費支出割合は77.2%と3.8%低下した。80%を切ったわけだ。この状況だと、政府が考える定額給付金などの経済効果はかなり怪しくなる。もちろん減税でも同じことかもしれない。社会投資、社会保障強化など、もっと効果的な方法はあるはずだが、選挙対策といわれてもしょうがないのか。

●マイナス3%
公的年金の運用利回り。はっきり言えば元金を割ったことになる。これは3%といっても金額でいえば2兆9000億円で過去最大。国内・外国の株式がマイナス10%台。外国国債はマイナス1%。60%を占める国内債券がマイナス0.42%という内訳になっている。(GPI:年金積立金管理運用独立行政法人

●マイナス7%
自動車の生産台数。台数でいえば200万台に上る。しかも1万4000人の雇用削減が伴う。これは新卒採用はもちろん、長期的なフリーター問題につながる可能性もある。


という具合だ。
このように新聞の1面に出てくるような数字は%で表記されるが、その実数は極めて大きく、そのまま身の回りに降りかかってくる数字だ。
同時に、この数字が出るまえから、官庁や政府で対策が講じられていることになる。道路整備増額なども、そうした水面下で検討されてきたものが、数字の発表のタイミングをねらって出てきているのだろう。

数字把握、対策は同時平行に進んでいるというわけだ。


これは企業も同じこと。
業績が厳しくなれば、それを防ぎ挽回するための対策が講じられ、
速やかに動き出す。
だから状況の把握は欠かせないし、
常時、壁にぶつかった際の対策準備をしておく必要がある。
常に緊張感を持っていること、スピーディーに動くことが肝心なのは言うまでもない。

企業の場合の数字は目標に対するものと、実績に対するものとがある。
実績比は順調に成長していることを表すし、
目標に対しては正しい状況把握と戦略戦術、商品&サービス力によって目標が立てられ、
自らの成長を実現していく数字だ。

実績比は機運となる数字があるのでわかりやすい。
これを下回るようだと、かなりの危険がある。

目標達成率は、そう考えると目標設定力がものをいう。
その前提に市場理解や自社が抱える課題や状況の理解がある。

目標というのは面白いもので、目標数字が適正だと、大体そのあたりに落ち着く。
全体で10%オンということもあり得る。
やはり目標が持つ適度なプレッシャーが、それを実現するための努力や工夫を各人に促すのだろう。目標というものの大きなチカラだ。

しかし一方で目標を大きく外したり、逆に大きく上回ったりすることもある。
大きく外すと反省も生まれるが、おおきく上回ると大喜びで終わることが多い。
しかしここにも大きな問題が潜んでいる。


『大きな読み違いには、大きな理由がある』

マイナスに振れようとプラスに膨らもうと、
大きな読み違いにであることには変わりない。
ときにはこうしたこともあるだろう。
今回の不況の主原因であるサブプライムローン不況も、
予期せぬ出来事と言えるのは、世界中がそれに振り回されているからだ。
しかし、よく見るとかなりのリスクを覆い隠すことで、
その危険性を安心感と見せかけた悪意あるいは勘違いが原因であることは間違いない。
いまは、その安定策に目が向いているが、
ヘッジファンドの制約、投資銀行の見直しなどが今見直されているのは、
そこにも原因があるからだろう。

企業の場合の目標設定力は、かなり基本的で重要なものだと思う。

なぜならそれは資本家や従業員に具体的に跳ね返ってくるからだ。
公開企業なら、目標を下回るだけで、すぐに株価に影響してくる。
投資家にしてみれば高い目標を達成することを期待して投資するのだから当然だ。
非公開企業ではその分危機感は薄くなるだろう。

また従業員にとっては、いまかなりの企業で見直されている成果主義の影響で、
目標設定を誤ることでそのまま評価につながってくる。
目標達成のインセンティブレベルの影響なら、
多少のあいまいさがあってもゲームとして割り切れるが、
成果主義はそのまま評価につながることが多い。
となると、目標設定を誤った経営陣は、
それなりの責任を負う必要がある。

当然、公開企業であればそれはIRの一環として、
厳しい株主総会が待っているし、それ以前に取締役会での糾弾もあるだろう。
下手をすると更迭もある。

成果主義はすでに多くの企業で見直されているらしいが、
それはこの目標設定が適正、公平に設定できず、
それゆえに同じように評価ができないからである。

さらに成果でわかりやすいのは数字だが、
数字はすべてをあらわしてはいない。
数字は個人についてくだされるが、
その数字は組織力やエリアや商品&サービスや取引先などの
さまざまな要因に影響をうけるものだ。
それは、事業内容によって大きなばらつきがある。
したがってその数字の捉え方そのものが経営力ともいえ、
その捉え方評価の仕方にノウハウがあり経営の力量を表す。

適正なら、社内の納得感、共感をよび結束力が高まり、推進力につながる。
しかしこれができずに制度にたよると、
しかも完璧な制度といったもに過度に期待すると、
それを運営できないマネジメントによって、かえってマイナスになることがある。

個人の目標設定シートを見れば、
その目標が適正なものなのか、あるいは評価できるものなのかがわかる。

適切な戦略戦術がない目標シートには、
偶然への期待だけが潜んでいることになるからだし、
評価が数字だけによるものなら、
そこにはマネジメントや経営ノウハウの放棄と、
不要のマネジメント層の存在の証明しかないからだ。
したがって、その目標シートを運用しようとすると、
無理が出て、経営力の弱さを露呈する。だからそうした企業は常に秘密主義をとる。
活発な議論や、一人の社員に対して直属上司だけでなく、
さらにその上の上司、役員が総掛かりで話し合うというようなことは一切ない。

結果だけでなく目標設定のち密さ、
そしてそれを実現するための対策が確認されてこその成果主義である。
達成数字だけを評価するのなら誰でもできる。
必要なのは適正な目標を設定し、その実現に向けた対策を評価し、
そのプロセスの実現を確認した上司、
あるいは経営陣がともに責任を負うという経営力なのである。