『日本の経営を創る』第二回目;三枝匡×伊丹敬之 日経新聞

三枝さんは『V字回復の経営』とか『戦略プロフェッショナル』を読んだことがあるが、
伊丹さんの本は今まで読んだことがなかった。

ただ、最近、書店で『よき経営者の姿』のタイトルに惹かれ少し立ち読みをしたことがあって、そのうち読んでみたいと思っていた。

前書きをみると、この伊丹先生は経営者バッシングで有名な方のようで、
経営者向けの講演の際にも、早く経営者の若返りを促していたらしい。
それなら、経営者論でもあるこの本は、経営者にとっては耳が痛い話だろう。

この本のテーマは経営者のあるべき姿、必要な資質を
経営者のつき顔、仕事、資質、育ち方、失敗、退き際、といった切り口で解明していくというもの。
取り上げられているのは松下幸之助、井深太、本田宗一郎をはじめ、
それらの超有名な経営者の後を継いだ、河島喜好、中村邦夫丹羽宇一郎氏など、
それぞれの伝記や経営書が出ているような経営者だ。

その中で、よく出てくるのが西岡常一法隆寺の大修理などを手掛けた宮建築の棟梁だ。
『木に学べ』を読んだ時、とても感動したことを覚えている。
木はその土地に育ったものを使え、とかいう知恵だけでなく、人を束ねる心構えなどは、いわゆる貫禄を感じたものだ。

法隆寺の棟梁には語り継がれている多くの口伝があるとのことだが、その中の
『百工あれば百念あり。これを一つに統べる。これ匠長の器量なり。百論ひとつに止まる、これ正なり』
『百論をひとつに止めるのの器量なきものは謹み惧れて匠長の座を去れ』
ということばが紹介されているが、
これなどは組織を率いる経営者にとっての力量、心構えをを示すいい言葉だ。
逃げない、ごまかさない、納得させる、そういった様々な要素がここに含まれている。
実力と人格がなければ、長は務まらない。
宮大工の世界ならではの口伝なのかもしれない。

企業の場合、血縁、株主、出向といったように、必ずしも実力や人望で上がってきたわけでもなく、経営が十分ではなくてもそう簡単には追放されない、あるいは自ら身を引くこともないケースもある。
しかし昨今の経営環境の激変などでは、トヨタのように創業家への大政奉還を決定した企業もあるし、大転換を実現して身を引くケースも出てきている。3年から6年くらいが多いのだろうか?
政治の社会でも、一内閣一仕事といわれて、安保、沖縄返還、日中国交回復、省庁再編、消費税、郵政民営化など、大体一つか二つの大仕事をめどに交代するような例があったようにもう。最近は、それができずに交代しているが。

内容は興味深いものばかりだが、
特に松下幸之助の引用は面白く、改めてきちんと読んでみようと思うほどだ。
町工場のときに『君のところは何を作っているのか?と聞かれたら、松下電器は、電器製品も作ってますがまず人をつくっています、と答えなさい』などは、
出来すぎのようなきもするほど、明快な真理を突いているように思う。

また経営理念の大事さも紹介されているが、
カネボウ再建で再生機構から派遣された小城武彦氏は、
まず企業理念を設定することに着手し、
全社員w対象にした自由記載のアンケートを実施。3000通に上るアンケートを役員と一緒によみ、言葉をねって一年かけて、『私たちの約束』という形にまとめたという。
その中には『人を思い続ける』という言葉がある。
製品を使ってくれる人をを直接見ることができない。だからいつも思い続ける、という意味だ
部外者が、ひと眼だけ見たのでは、その背景や思いが伝わらないかもしれないが、押しつけの企業理念ではない、自分たちも提案したという参加の意欲があるかrあぬくもりを感じるのはうがちすぎだろうか?

別に経営者ではないが、尊敬される経営者の言動には、感動できるものがあると思った。