目標、あるいはミッション

目標を設定すること、および目標そのものが持つ力について、考えてみた。

仕事では必ず目標がある。
企業としての事業計画があり
組織としての目標がきまり、それが個人の目標に落とし込まれる。

わかりやすく言えば売上目標がある。
企業の目標があり、事業や製品・サービスに配分され、それが個人に割り当てられる。

実際の順番は、真ん中あたりで決められる。
市場環境を調べ、競合、商況・営業の読みを考慮し、全体の数字が決まり、それが現場に降りてくる形が多いだろう。

この目標に現場の納得が得られるかどうか。
これは重要だが、それとは無関係に実績は目標に近いところに落ち着くことが多い。
もちろん、目標が達成するかどうかは、その時の環境によって左右されるから、絶対的ではない。
実際、昨年から今年にかけての企業の業績は、想像以上に落ち込んでいるのは、
単に目標の読みを見誤っただけではなく、環境の変化が想定以上だった不可抗力ということもできる。
多くの企業がそうだったのだから、それが説得力を持つ。

しかし一方でスズキ自動車では会長が在庫の増加にいち早く気が付き、生産を抑え、販売を強化することで、
被害をかなり抑えたという事実もある。
これは経営力というやつだろう。
目標を設定するのも緻密な市場調査をして、体制を作り設定するのだから経営力のなせる技だが

環境変化を読み取り、スピーディーに手を打つのも、まさしく経営力といわなくてはならない。

さて目標設定が持つ力についてだ。
なぜ、結果的に目標に近いところまで実績を上げることができるのか?
いろいろなことが考えられるが、
・経営の意思が強かった
・実績を踏まえたシミュレーションが正確だった
・実例から設定された目標だから、それほどのギャップが出るはずがない
・目標が設定されたことで、現場で意識・無意識を問わず、計算が働き、行動に反映された

このうち経営の意思は、経営者への尊敬・信頼と単に目標が持つ力に分類できる。
その意味で経営に対する尊敬・意思は、心情的なものだけでなく、畏怖のほうが大きい可能性がある。
経営の意思で決まった以上、達成しなければ、マイナス評価になるというものだ。
また経営の意思も、それなりのデータに基づいたものであればあるほど、意思よりはシミュレーションに近くなるので、二番目、三番目と同じことになる。
この点は、市場環境が想定できる動きの範囲である時には、確かにそうなる。

しかし、昨今の状況を見ればわかるようにこれは結果論にすぎない。

となると、最も可能性が高いのは、最後の目標数字が持つパワーというものだろう。

個人が行動を起こすときには絶対に目標が設定されたほうが効果的だ。
目標のない行動では、努力や工夫のばねが働かない。
高く難しい目標だが、どうすればそれを達成できるかということを考える力、意欲をふるい立てるには、
どのくらい努力すればいいのかの目安が必要になる。
段差の高い階段を上がるには、その高さが分からなければ、足をどの程度上げればいいのか分からないのだ。

となると、必要なら助走を伸ばす、他の力を借りるなどの準備が具体的になってくる。

個人がシミュレーションをたて、その通りに進めるために、戦略戦術を立てる。
しかしこうした意識的なもの以外に、無意識に行動したり発言したりすることも、多いはずだ。
顧客にお願いするにも声の大きさが違ったり目つきが変わったり、頻度が増えたりといった変化が出てくるはずだ。

つまるところ、意識的にやれることは、それほど変化が出るとは思えない。
確かに、論理的に戦術を組み立てることはできるし、それが効果を上げることはできる。
しかし、そう計算通りにいかないのが、現実の業務だ。
そうなった時でも、インプットされた目標は揺るがない。
それが、取引先に伝搬して、希望通りの効果に結びつくというわけだ。

だからうまい目標の立て方が大切になる。

逆説的に言うと、こうした力をくじかせるのは、
納得できない目標を設定したり、それを実現するための施策を考えなかったり、
高い目標であるにもかかわらず、そのプロセスに関与しない経営の存在かもしれない。