情報源としてのマス媒体、あるいは記者クラブ制度

gaos2009-12-31

『ジャーナリズム崩壊』という新書がある。
上杉隆というフリージャーナリストが書いているものだが、
なんどか書店の棚で見たことがあった。

この著者の本は、自民党・元安倍内閣の、文字通り崩壊を描いた『官邸崩壊』ですでに読んでおり、
その内実をえぐったルポにはかなり興味深い事実がえぐられており、面白く読んでいた。
その後、タイトルは忘れたが雑誌の高ラムを集めた本に目を通したが、これはすでに公表され、短いものだったので、さほど印象に残らなかった。
そしてこの『ジャーナリズム崩壊』は、幻冬舎とうこともあり、『崩壊シリーズ』の工業的な始まりかも受け止められ、手に取ることもなかった。

それに加えて、TVのコメンテーターとして登場していたり、一次鳩山内閣に組み込まれる、あるいは参加するといった報道もあり、興味が薄れていたこともある。

ルポルタージュ専門誌・G2 

ルポルタージュの砦とも言われていた月刊現代が廃刊?になり、そのあとに登場したG2。
その少し前に、週刊現代の元編集長だった元木昌彦さんの『週刊誌は死なず』(平凡社新書)で、
ルポルタージュや反権力姿勢を鮮明にしてきた週刊誌受難の時代を読み、日本のジャーナリズムの特殊性あるいは保守性、さらに言えば政府の反動的なプロフィールをわずかながら知った。
その中で、ルポルタージュは法律的に制約が強まり、金のかかるルポルタージュは存続がますます厳しくなっており、その象徴が『月刊現代』の廃刊という指摘がなされていた。
しかし、その系譜につながるルポルタージュ専門誌が発刊されそうだ、という記載があり、このG2の発刊を期待して待っていたところだった。

しかし実際に発行されて見ると、かなり斤量のある高価な用紙を使い、価格も1300円と、ちょっとした単行本並みで出てきたことに、少々反発を覚え、購入することはなかった。
本来、こうした本のハードは最低限の条件を満たせば済むはずだ。
安く、手軽に購入でき他方がはるかに、事実を広く広報するにもふさわしいと考えるからだ。
そして2号が出た。
創刊号が真っ黒な表紙デザインであったのに対して、今度はイエローの派手なものになっている。

平積みになっているのを見て、目次を見てみる上杉隆の名前を見つけた。
『裏切りの総理官邸』というのがその記事のタイトルだ。
参加もうわさされていた民主党内閣のことを書いているのか?と手に取ってみたところ、
かなり鋭く、鳩山内閣のブレを指摘している。
それも権力の座についてからの、閉鎖的な傾斜の強まりについてである。

著者は、以前から日本の『記者クラブ』の閉鎖性や、それが及ぼすジャーナリズムの堕落への恐れを指摘していた。そしてその問題への憤りについて書いた『ジャーナリズム崩壊』というまさに、この本にっよって、さまざまな取材の機会や、TVのコメンテーターとしての発言の場を奪い取られてきたことを明らかにしている。

ここでは欧米というか世界中の民主国ではありえない日本独自の記者クラブの閉鎖性、それゆえに政府や政治家の発言を均一的に広報するだけに堕落している日本の新聞やNHK,TV局の姿勢を弾劾している。
また、著者がかつて在籍していたニューヨークタイムズとの比較を通して、主観的ジャーナリズムと日本の客観的報道を取り繕うジャーナリズムの不可解さ、社会に与える悪影響を指摘している。

これに関してはさらに調べて考えてみたいことだが、
少なくとも今のマスコミは、このままではネット時代のさまざまな情報発信によって、全く葬り去られる可能性が高いということだけは確かなようだ。