再就職支援の時間軸

最近、再就職支援の仕事をしていて、何か不足感を感じている。
ビジネスとしてやっている分には、担当する会員=就職希望者を支援し、適正な時間をかけ、適正な再就職を実現することが職務になる。
事業である以上、限られた期間で設定された目標人数の決定が、カウンセラーに課せられた目標になる。

この目標の設定は、実に難しく、エリアや年齢や職業、肩書き、ポジションによって、市場=企業の求人ニーズは大きく変わるので、それをデータの裏付けをもって的確にシュミレーションしなければならない。
しかし実際には、そんなことは不可能にちかい。あまりにも不確定要素がおおいからだ。
少なくとも年齢は、はっきりと決定するまでの期間に差が出るし、データも出せる。
だからそれくらいはやってもいいはずだが、それをやろうとする経営者は少ない。
どのみち、不公平さは残るからだ。
まあ、会員の担当を決める際に、ある程度のカウンセラーの適正を考えて配分するくらいが、できる範囲なのだろう。
だが、そういった気配りが実は、不公平を増加していることに気が付いていない管理職は多い。

しかしいま、ここでいいたいのはそんな些細なことではない。

再就職を希望する人に対して提供するサービスの時間軸、分野についてである。

通常、こうしたサービスは応募書類の作成と面接の練習。
これにマッチングと呼ばれる求人情報との仲介を柱にしている。

応募書類、特に職務経歴書は、書いてみたことがある人ならわかっていると思うが、結構、難しいのだ。
自分の経歴なのに?と思うが、むしろそれだから難しい。
言葉ひとつ、説明ひとつとっても、人事担当者には理解できそうもないことが多いのだ。
だから第三者がそれを確認し、ときほぐしたり、取捨選択をしていくことで、適正量のものにしていくわけだ。

その作業は、会員によって相当負荷が異なる。
なぜなら、わき出るようなキャリアの持ち主と、同じことをずっとやて来て変化がほとんどない人では、
やるべきことの質が異なるからだ。
しかし、それもあるていど経験していると、対応することができるようになる。
それで、本人も満足できるような書類ができあがる。
中には、「すごい、こうやって書けばずいぶん立派な仕事をしてきたように見えますね」と、自分のことなのに変な関心をする人も少なくない。

ただ、ちょっと待てよ
記憶のよび覚ましや、掘り起こしは
確かに的を得た質問や、具体的な事例をあげながら質問をしていけば、
ただ本人が記憶していたことよりは、はるかに多くの、アピールしやすいネタを発見したり表現することができる。
でもそれは本人の記憶の中からだけだ。
それに気がつくと、本人の価値観や自覚といった制約の中でのそうした事柄は、自己理解という観点から考ええると、
ずいぶんと偏ったり、不足したりしているのではないか、と思うようになる。

記憶の中にない、見落としたていたものが何かがわかれば、本人の価値基準もわかってくる。
そう考えると、前職の企業風土や人事制度、改善運動などの活動、異動の考え方などを、総合的に理解していけば、それは可能だ。

それを再就職サービスの、ゴールである就職決定の時点で考えると、もう少し違うことが見えてくる。
入社した後に、その人がその企業に適合できるかどうか?
これは実際に入社して職場に配属され、働いてみないとわからない。
もっといえば、担当の作業をして、関係する人と接し、時には意見を交わし、教えてもらい、間違ったら怒られたりして気を受けたりしないとわからない。
また職場で気づいたこと、改善できることが、どう変わっていくのかを見ないと、わからない。

となると、そこまで体験しなければ本当に適正な転職だったのかがわからないことになる。

しかし注意深く見てみると、そういう自分は、職務経歴書などに書くほどではないけれども、たしかに前職までのキャリアから、影響を受けていることに気がつくのだ。

そこでさきほどの話だ。

自分の記憶や自覚だけに頼って書類を作るのではなく、
前職の企業のことをもう一度よく知って、そして自分を見つめなおす必要が出てくるし、
それに気づけば、どのような企業であれば、のびのびと働けるかがわかってくるのではないか、という
一つの仮説が成り立つ。

前職を辞めてからではなく、それ以前から、就職が決まってバンザイでおわりではなく、
きちんと納得し、周囲から評価されるまで。

再就職支援の時間軸は、ずいぶんと広がる。