アイスブレイクの重要性

アイスブレイクというのは、コミュニケーションをとる上で、まず欠かせないステップになる。
これがスムーズに行けば、お互いに心のバリアーを解き、フランクなコミュニケーションを始めることができる。

コミュニケーションというのは、お互いに伝え、受け止め、相互の理解を深めていく作業である。
警戒や緊張が少ないほど、効果的に進んで行く。

それはもちろん言葉だけのやりとりではない。表情、仕草、声の大きさ、話すスピードやリズム、といったすべての要素が絡んでくる。
その中で、なんといっても重要なのは傾聴であることは間違いないが、笑顔や、ねぎらいといった、日常の挨拶に似た、小さくても安心できるメッセージも、相手の不安を解消する大切な要素だ。

キャリアカウンセラーが、初対面のクライエントと面談をする場合に、最も重要なのが、このアイスブレイクから始まるラポール(関係構築)だと思う。
これは基本なのだが、多くの場合、相手の情報がない上に、時間が限られていることがほとんどのため、これが中途半端になって進むことが往々にして起こる。

もちろん、最初の会話のやりとりの結果、ラポールが十分に形成され、最初にそれがパッとできあがり、そのあとはスムーズに進むというものではない。会話のやりとりの結果、それは確実なものになっていくし、途中で気を抜いてしまい、クライエントの気持ちの理解が滞ったり、ともすると信用を失ってしまうこともある。この場合、最初にできあがりつつあった信頼を失う分、壊れてしまうものは多い。だから気を抜けないのだ。

また昨今の、業績好調な時に実施されるアグレッシブな企業のリストラ方針で、早期退職制度の利用を提案されている場合は、相談の目的がシンプルでない場合も多い。
やめたくない。だから、辞めるのは得策ではないという確信を強めるために面談を希望する場合もあれば、自分のキャリアがどの程度、社会で通用するのか、を見極めに来る場合もある。
共通なのは、相手からの意見を根拠に、自分の意見を定めるというケースだ。
この場合、自分の気持ちは守りにあるので、積極的な意見は少なく弱い。
だから対応には、あなたが自分で決めることであり、取り巻く環境や対象化rなお意見をバランスよく聞き、自分で行動を起こし判断する問題であることを、常に念押しすることが必要になる。
あなたは相手の意見をそのまま自分の意見にする人なのですか?
私たちには、そして他の誰も、あなたの人生を十分に理解できていない。だからあなたが考え責任を持って判断するのですよ。
いまあなたがしなければならない決断は、あとでやり直しはできない。環境も条件もかわっていくので、またその時に悩み考え判断しなければならない場面はまた来ますよ。
といった意見をすることも欠かせない。

こうした前提で、欠かせないのが、相手をリスペクトすることだ。
必死に、あるいは反省はありながらも、それなりに努力して成果を上げてきた人のキャリアを、簡単に理解したり評価しないことだ。
彼らの尊厳、自信を、相手の身になって感じ取り、まず評価すること。その経験の中で彼らが感じた自信や誇りを、自分のもののように、まず喜び評価し、尊敬すること。
ここからしか、ラポールは始まらない。
カウンセラーは多くの多様な方々と話をし、アドバイスをして来ている。
ともすると、自分お体験の中に一定の固定化された基準を作り、評価する。
これは経験から生まれた事実でもあるので、これは自分の中で適正に作り上げていかなければ、経験を積む意味がない。気をつけなければいけないのは、それが絶対ではないことをしり、それを一つの意見として、考えてもらうことに留意することだ。

クライエントは、偏った自信と不安を抱えている。
その偏りに不安や、反対に自信を持っている。
そのために、一般的な傾向や事例を、バランスをとった検討、思考をしてもらうために、アドバイスしたり示唆したりすることが、とても大切だと思う。

決めつけないこと。決めつけることが相手の尊厳を傷つけることを肝に銘じておかなければならない。アイスブレイクから始まるラポールの経営過程において、これは十分に気を配っていくことが必要だとおもう。