先が見えた、先が見えない。退職の理由

先が見えてしまったから、・・・。
先が見えないから、・・・


このどちらもが、若年層の退職の理由に挙げられている。
一見矛盾するような言葉だが、根は同じだ。

目標とする先輩や上司がいない。
あんな課長だったらならないほうがマシだ。
結局、うちの会社ではこの程度の発想しかできない。
競合と比べて、このスピードやプロセスの長さでは、とても太刀打ちできない、・・・。
というふうに置き換えると、自分の将来が見えない。あるいは頑張ってもせいぜいあの程度の仕事や権限しか任せてもらえないという、失望感が浮き上がってくる。

先が見えない、というのも同じことだ。
誰がどのように決めているのかわからない方針や、KPIといった達成指標。これって上が現場の足を引っ張っているのと同じことじゃない?

ここで不足しているのはなんだろう。
1.そもそもその企業、あるいは経営陣にビジョンなるものがないというケース。それが、現場を知らない、経験していないという理由でも、現場からたたき上げてきたにもかかわらずビジョンを描けない、という能力不足が理由にしても、方針を打ち出せていない。あるいは組織全体に方向性を示し得ていない、という理由だ。
2.経営はそれなりにビジョン、計画を描いているのだが、中間管理職のところで十分に理解されていないために、具体的な戦略戦術に落とし込めていない。それゆえ、現場が動けない。動かない。これが第二の理由。
そもそも経営陣が決めるのは、方針戦略であって、現実的にどのようにすればそれを達成できるかといった、具体的な行動戦略戦術には落とし込めていないのがふつうだ。そこに現場との経営の媒介・増幅・修正といった機能を持った現場を把握した中間管理職の存在意義がある。
それが能力的にできない、あるいはその機能を理解していない中間管理職が機能していない。
3.新しいことを生み出したり、課題を改善したりという組織風土、制度がない、というのが第三の理由だ。
これは1、2に大いに関連するのだが、上がダメでも、現場でそうした発想は生まれるはずである。これを行動に移せるかどうか、というところが現場の課題だ。
多くは居酒屋で会社や上司の悪口を言い合って終わっているのが現状だが、それでも評価面談の際に、多少なりとも意見を言い機会はあるはずである。それがダメなら、さらに上の上司や、人事に伝える。これらができないのは、組織や制度の問題だが、そうした意見を聞く姿勢があるかないかは風土の問題、柔軟性の問題だ。

こうした課題はもっと色々あるだろう。組織というよりは、特定個人の問題であったり、固定化された風習というのもある。それを放置しているのが何かは実に様々だ。
したがって、これらを変えたり、是正するのはかなり難しい。それぞれが悪意だけでなく、そういうものだ、あるいはこれしかない、といったある意味での確認を持っていると、衝突しかなく、これは上位職位のほうが勝つのがふつうだ。

となると、これらの課題を解決する新たな方法を考えたほうが効果的であることが多い。
例えば小集団改善活動、経営への提言、新規事業提案といった制度だ。
これは、制度自体は経営に貢献しやすいので、反対する理由が少ない。もちろん、そんな無駄なことをやるのはコストの無駄だという意見も出るだろうが、かなり小さい。みんなの知恵を活用する、あるいは考える経験をさせるのはいいことだという通常の判断が可能だからだ。
したがって、この運営方法でどこまでできるかだ。
これらはおそらく事業部長とか、経営企画とかといった、比較的シンプルな組織で検討されることが多い。かつ実行責任者は課長レベルだろう。そうなればそこに意見を言うのは現場でもたやすいはずだ。

まず、現状の活性化という点で書いてみた。